《THE ROOM》は、閉鎖生態系実験や植物工場を参考に、自然環境と切り離して、内部で完結した生態系を保つ部屋に住む未来を想像する映像作品である。

閉鎖生態系とは、内部で物質循環の完結した生態系のことを指す。宇宙空間での長期滞在や火星移住を見据えての実験、野菜の垂直工場での栽培への転用など、各方面で研究が行われている。自然界の生態系は開放系であるため、人工的に管理できる閉鎖された循環系を作り出すことは困難であり、物質の循環はある程度実現できても電力や光のエネルギーは外部からもたらされるのが現状である。

映像の中では、抽象的な舞台のように設られた部屋で、孤立した閉鎖生態系での生活が演じられる。架空の科学者が語るガイドのようにして挿入されるテキストは、生態系実験施設で実際に行われている研究や、過去の実験、植物工場研究会へのインタビューに基づいており、閉鎖系のシステムや技術の進歩が自信と希望を持って語られるが、それには現時点では実現不可能な装置や技術がよりどころになっている。気候からも土地からも離れて、思い通りにデザインされた環境はユートピアなのだろうか。

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